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2021年1月24日 #0002 ちんちんさん

こんにちは。岐阜市で保険代理店を営んでいる株式会社L’s(エルス)の河合淳司です。

皆様いかかお過ごしでしょうか。暦の上では大寒で一年で最も寒いとされる期間なので寒いのは当たり前ですね。

日本では古来より自然を味わう感覚が優れており一年を24等分して捉える二十四節気、更に細かく分けた七十ニ候があり、その期間にあった行事事や風習など現代にとその名残が節々に残っています。一見、堅苦しく馴染みの薄い話の様にも捉えてしまいがちですが季節の移り変わりを少し意識してみると面白いですね。

 

私にとって大寒(1月20日〜2月3日)と言えば『ちんちんさん』が挙げられます。 生まれ育った岐阜県不破郡関ケ原町野上では大寒の間、地元のおばあちゃん達が日中と夕方に鐘を鳴らしながら行脚して火の用心の注意喚起をする風習がありました。

幼い頃の話になりますが 暗くなった夕方に どこからともなく ちん、ちん、ちん‥と一定のリズムの鐘の音が聴こえてきました。恐る恐る窓の外を覗くと暗闇を歩く人の行列、灯が視界に入りました。 国語の授業で習った『ごんぎつね』に出てきた挿絵(村の葬式の行列)と 得体の知れないちん、ちん、ちん…の鐘の音、暗闇の行列にゆらゆらと動く灯を結び付けて 『お化けの行列に違いない。大人しくしていないと家の中に入って来て連れて行かれる』 と怯えてました。(笑)

ある日、その不思議な光景を母親に聞いてみると 「ちんちんさんって言ってね、地元の方が火事にならないように、気をつけましょうって見回りをしてくれてるんだよ。学校に行っていて知らないと思うけど日中も見回りしてくれているよ。おばけの行列じゃないよ。ゆらゆらと揺れる灯は歩きながら懐中電灯を持っているからそう見えたんだよ。ちんちんさんは節分まで続くの。鐘の音が聞こえなくなると節分を越えて春に向かうんだよ。」

当たり前が当たり前でなくなる

毎年、当たり前に聞いていたのですが中学に上がる頃には部活動が始まりその時間帯には家に居ないので聞かなくなっていきました。

大人になってから「ちんちんさんは随分前に継承する方がいないから無くなったよ」と聞きました‥ 勝手な話ですが聞けなくなったら途端に「なんだか寂しいなぁ」と思いました。

あの鐘の音を聞いていた頃から何十年が過ぎても鮮明に思い出す ちん、ちん、ちん‥のリズム。 私にとって日本の原風景の一部として大寒の夜になると響いてくる気がしてます。

幼い頃は「ちんちんさんの鐘が聞こえなくなると春がくる」と教えてもらった思い出に自分なりの解釈を加えてみました。

「受け取る側、見回ってもらう側は楽だけど続けてた人は大変だっただろうなぁ。寒い中、期間中の毎日、頭が下がります」

「お化けの行列と思い込んでいたのに母の一言で見方が一変した。人は今まで経験した情報量と感情で端的にジャッジしがちな生き物なんだぁ。それが悪いことではないが視野が狭いということは選択肢が少なく危ういこともある」

「幼い頃の記憶は鮮明に残るものなんだなぁ。今から思うと今まで当たり前だった思い出の中に意外と日本の原風景の断片のようなものが残っているなぁ」 などなど。

皆さんにとって大寒が来ると思い出す記憶は何ですか? 現代風に言えばコンビニやスーパーで見かける恵方巻の案内チラシでしょうか。

ご自身の記憶を頼りに少しだけ辿り想いを馳せるのも面白いと思います。